イワシの栄養|健康への効能と効果的な食べ方

イワシの栄養|健康への効能と効果的な食べ方

安価かつ様々な調理法で食べられるイワシは、日本人にとって古くから馴染み深い“食卓の味方”。

「イワシ百匹、頭の薬」という言葉があるほど、栄養価が高いことでも知られています。

  • 【マイワシ(生)可食部100gあたりに含まれる主な栄養素】
  • マイワシ(生)可食部100gあたりに含まれる主な栄養素
  • タンパク質…19.2g
  • カルシウム…74mg
  • 亜鉛…1.6mg
  • パントテン酸…1.14mg
  • α-リノレン酸…59.0mg
  • EPA…780.0mg
  • DPA…170.0mg
  • DHA…870mg
  • ビタミンD…32.0μg
  • トリプトファン…220m
  • ※出典:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

イワシに含まれる栄養分の中で特に注目したいのは?

オメガ3脂肪酸(EPA、DHA、DPAなど)

イワシは、中性脂肪や悪玉コレステロール値を低下させたり、脳機能の健康維持やアレルギーを抑制したりといった健康効果が期待できる「オメガ3脂肪酸」の含有量が多い魚です。

特にEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)が多く含まれているため、日頃からイワシを食べることで血液サラサラ効果や認知症の予防効果などが期待できます。

ビタミンD

ビタミンDは腸管からのカルシウムの吸収を促し、骨を丈夫にして骨粗鬆症の予防に役立つ栄養素です。

ビタミンDが不足すると、骨密度低下と骨折リスクの上昇をもたらすと考えられています(※1)。

日本人の1日あたりのビタミンD摂取目安量は、9.0μg(日本人の食事摂取基準/2025年版)です。

生のマイワシには、可食部100gあたりに32μ、丸干しマイワシには50.0μgのビタミンDが含まれている(※2)ため、一尾で十分な量を摂取できます。

イワシのビタミンD含有量

コエンザイムQ10(CoQ10)

コエンザイムQ10(CoQ10)は、1957年に発見された成分です。

エネルギーの産生や細胞の活性化、高い抗酸化作用による老化防止効果が期待できます。

また、コエンザイムQ10を摂取することで脳の酸化ストレスが低下し、認知症発症の原因となるアミロイドβが低減して認知機能の改善につながることが示されています(※3)。

人体にとって重要な働きをするコエンザイムQ10ですが、その量は20歳をピークとして加齢とともに減少し、80代では20歳の頃の約半分にまで低下します。

ある研究では、心臓での減少量は20歳を100%とすると40歳では58.2%、80歳では42.9%にまで減少することが明らかになりました(※4)。

イワシにはコエンザイムQ10が豊富に含まれているため、日頃から積極的に食べることでアンチエイジング効果が期待できます。

加齢によるCoQ10体内含有量の変化

セレン

イワシには、抗酸化作用が高い必須ミネラル「セレン」が含まれています。

セレンには体内の老化を促進する活性酸素を除去する働きがあり、コエンザイムQ10と同様に高い抗酸化作用によってアンチエイジング効果が期待できます。

セレンの1日あたりの成人摂取推奨量は、男性が30μg、女性は25μgです。

セレンが欠乏すると、軽度では脱毛や爪の変形、重度になると心筋症などの心臓疾患を引き起こす可能性があります(※5)。

セレン不足による影響

しかし、過剰に摂取した場合も爪の変形や脱毛などセレン中毒の症状が表れるため、摂り過ぎには注意が必要です(※6)。

マイワシ(生)一尾には48μgのセレンが含まれている(※7)ため、1日1尾のイワシを食べれば十分な量のセレンを補給できるといえるでしょう。

※1:岡崎亮. "5. ビタミン D 欠乏症とビタミン D 不足." 日本内科学会雑誌 96.4 (2007): 742-747.

※2:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

※3:清水和弘, et al. "還元型コエンザイム Q10 が中高齢者の口腔免疫能および健康関連 QOL に及ぼす効果." 日本補完代替医療学会誌 12.1 (2015): 37-43.

※4:藤井健志. "アンチエイジングと還元型コエンザイム Q10." ビタミン 92.8 (2018): 372-378.

※5:増本幸二. "セレン (Selenium; Se) 欠乏とその対策." 外科と代謝・栄養 58.1 (2024): 1-4.

※6:吉田 宗弘, セレンとモリブデンの生理機能と適切な摂取量の範囲(<特集>日本食品標準成分表(2010)に新たに収載されたビタミン・ミネラルの活用と課題), ビタミン, 2012, 86 巻, 10 号, p. 548-557

※7:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年

イワシは体内水銀量が少ない魚

魚の体内には、自然界に存在する微量な水銀が食物連鎖の過程によって蓄積されています。

マグロ(クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ)など食物連鎖の上位にいる大型魚(クジラを含む)になるほど、体内の水銀濃度が上昇します。

しかし、イワシは食物連鎖の下部に存在し、寿命も約2~3年と短命です。

そのため、体内に水銀が溜まりにくく、子どもや妊娠中の人も安心して食べられる魚といえるでしょう。

海洋における生物濃縮

DHAやEPAなどオメガ3脂肪酸が含まれる魚介類は、健康的な生活を送るためにも積極的に摂りたい食材です。

水銀含有量が多いとされる大型魚に偏って摂取するのではなく、様々な種類の魚をバランス良く食べて、魚の栄養分を吸収しましょう。

イワシの栄養成分を効率良く摂る食べ方は?

イワシに含まれるEPAやDHAは、調理方法によっては半分以上が失われてしまいます。

イワシの栄養分を効率良く摂取するのにおすすめなのが、水煮の缶詰を食べる方法です。

缶詰には、DHAやEPAが豊富に含まれる骨周辺部分が丸ごと入っているため、イワシの栄養素を無駄なく摂取できます。栄養が溶け出した汁まで使い切るようにしましょう。

イワシに含まれる脂肪酸量

缶詰以外なら、生のまま刺身で食べると栄養分が損なわれません。

マイワシを調理した時のEPAとDHAの割合の変化

イワシを食べて健康的な毎日を!

イワシは健康促進や美容効果があるうえに、安定的に供給されて安価で購入できる、食卓の心強い味方です。

小さな体に驚くほどの栄養を詰め込んだスーパーフード・イワシを、毎日の食卓に取り入れませんか。

焼きたての香ばしいイワシや、シンプルな塩煮で味わうその美味しさに、あなたも虜になるでしょう。

とはいえ、毎日のようにイワシを購入して調理するのは手間も時間もかかって、面倒に思えるかもしれません。

その場合は、イワシから抽出したオイルを使ったサプリメントなどを活用するのもおすすめです。

健康寿命を延ばすために、イワシの栄養成分を活用しませんか。

食品保健指導士・管理栄養士 古本 楓

この記事の執筆者

グリーンハウス株式会社

食品保健指導士・管理栄養士

古本 楓

食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、青魚の健康効果やオメガ3脂肪酸・DHA・EPA・DPAについての情報をお届けいたします。

【資格】
公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
 食品保健指導士
管理栄養士