オメガ3脂肪酸とは

オメガ3脂肪酸とは

オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)とは

脂肪酸は、脂質を構成している要素です。

化学構造の違いによって「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類に分別され、不飽和脂肪酸はさらに「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」に分けられます。

オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)は多価不飽和脂肪酸に属する、人間の健康に欠かせない必須脂肪酸の一種です。

脂肪酸の分類
オメガ3脂肪酸の食事摂取基準

オメガ3脂肪酸の種類

オメガ3脂肪酸には主に4つの種類があります。

  1. α-リノレン酸(Alpha-linolenic acid:ALA)
  2. ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid:DHA)
  3. エイコサペンタエン酸(Eicosapentaenoic acid:EPA)
  4. ドコサペンタエン酸(Docosapentaenoic acid:DPA)

α-リノレン酸はエゴマ油や亜麻仁油、クルミなどのナッツ類に含まれる植物由来の脂肪酸です。

DHA、EPAは魚介類、特に青魚に多く含まれています。DPAの含有量が多いのは、アザラシなどの海獣です。

可食部100gあたりのDHAとEPAの含有量比較

オメガ3脂肪酸の効果

オメガ3脂肪酸は健康な体を保つために欠かせない脂肪酸であり、様々な生理作用と健康への効果があることが分かっています。

主に細胞膜の構造維持や炎症の調節、心血管系の健康に重要な役割を果たしています。

  1. 抗がん作用
  2. 抗心疾患系疾患
  3. 抗アレルギー作用
  4. 抗炎症作用
  5. 情緒安定作用
  6. 抗糖尿病作用
  7. 抗皮膚炎作用
  8. 体脂肪蓄積抑制作用
  9. 記憶学習機能維持作用
オメガ3(n-3系)脂肪酸の生理作用

このように、オメガ3脂肪酸は人体にとって健康を維持するために欠かせない存在です。

しかし体内では合成できないため、食事やサプリメントから摂取する必要があります。

オメガ3脂肪酸の摂取で腸内に善玉菌が増加

オメガ3脂肪酸が腸内細菌叢に与える影響を調べた研究で、オメガ3脂肪酸のサプリメントを8週間にわたって摂取したところ、腸内に善玉菌(酪酸産生細菌属)が顕著に増加したことが明らかになりました。

このことから、オメガ3脂肪酸を補給すると腸内環境が整い、健康的な状態へと変化すると考えられます(※)。

※:La Rosa, Francesca, et al. "The gut-brain axis in Alzheimer’s disease and omega-3. A critical overview of clinical trials." Nutrients 10.9 (2018): 1267.

オメガ3とオメガ6の違いは?

オメガ3とオメガ6はいずれも必須脂肪酸です。どちらも健康維持に重要な脂肪酸ですが、異なる特性と役割を持っています。

オメガ3脂肪酸

主に魚介類、特にイワシやサバなどの青魚や、マグロやサンマといった脂肪が多い魚に多く含まれています。

抗炎症作用を持ち、心血管系の健康や脳の機能維持に寄与します。

オメガ6脂肪酸

主に植物油やナッツに含まれ、炎症反応や免疫系の調節に関与します。

ただし、過剰摂取は慢性炎症や心血管疾患のリスクを高める可能性があります。

オメガ6脂肪酸のアラキドン酸には炎症を促進する作用があり、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎などを引き起こす可能性があります。

また、アラキドン酸と顔面のシミ・シワの関係性についての調査では、アラキドン酸の摂取量が多くなるとシミの程度が悪化し、シワが長くなるという結果が出ました(※)。

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の理想的なバランス

オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、ともに身体を健康的な状態を保つために欠かせない脂肪酸です。

しかし、現代の食生活ではオメガ6の摂取が過剰になりがちであり、これが健康問題の一因とされています。

姓別・年齢別オメガ3(n-3系)脂肪酸の摂取量 姓別・年齢別オメガ6(n-6系)脂肪酸の摂取量

オメガ6脂肪酸の過剰な摂取による悪影響の一例として、アレルギー性鼻炎を含むアレルギー性疾患が挙げられます。

花粉症の人は、そうでない人に比べてオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取比率が有意に低いことが、調査によって判明しました(※1)。

その一方で、オメガ3脂肪酸を過剰に摂取し続けると、血液中の血小板減少などの作用によって出血時間が長くなる傾向があります。

そのため、脳出血患者など出血性疾患がある人は、オメガ3脂肪酸の摂取量に注意が必要です(※2)。

健康のために重視したいポイントは、オメガ6脂肪酸とオメガ3脂肪酸のバランスです。

理想的な摂取比率は、オメガ6脂肪酸が2~4:オメガ3脂肪酸が1とされています。

脂肪酸の理想的な摂取量の割合

疫学研究において、オメガ6脂肪酸のアラキドン酸は、DHAが多い魚を食べた場合には増加し、EPAが多い魚を摂取した場合には減少する傾向にあるという報告があります(※3)。

食事やサプリメントを通じて適切な量のオメガ3脂肪酸を摂取し、健康的な脂肪酸バランスを保つことが大切です。

オメガ3脂肪酸を多く含む魚介類を日頃の食事に多くとり入れることで、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の摂取比率が改善し、健康増進や維持が期待できるでしょう。

※1:鈴木元彦. "1. アレルギー性鼻炎と生活習慣." アレルギー 64.7 (2015): 911-917.

※2:厚生労働省”アラキドン酸補給の安全性に関する研究

※3:ITANO, Kazuomi. "Adult Desease and Marine Foods (1) Highly Polyunsaturated Fatty Acids." SEIKATSU EISEI (Journal of Urban Living and Health Association) 31.6 (1987): 308-311.

食生活の変化とオメガ3脂肪酸摂取量の減少

かつての日本人の食生活は、魚が中心でした。

しかし、戦争を挟んで食生活が大きく様変わりし、戦後は肉類が中心となった欧米風の食事になりました。

時代の流れや生活スタイルの変化とともに、魚料理が食卓にのぼる回数は減少。それに伴って、オメガ3脂肪酸の摂取量は減り続けています。

魚介類と肉類の1人1日あたりの摂取量の推移

オメガ3脂肪酸を効率的に摂取できる調理法は?

魚からオメガ3脂肪酸を摂取する場合、最も効率的に摂れる調理法は刺身です。魚に含まれているオメガ3脂肪酸をそのまま摂取できます。

煮魚にした場合は、煮汁にオメガ3脂肪酸が流出しているため、煮汁も有効活用するようにしましょう。

オメガ3脂肪酸を摂取するのに向いていない調理法は、揚げ物です。健康のために魚を食べる場合は、刺身か煮魚、あるいは蒸し料理がおすすめです。

生のサンマを調理した時のEPAとDHAの割合の変化

オメガ3脂肪酸不足の悪影響

魚離れに伴うオメガ3脂肪酸不足は、肥満や高血圧、糖尿病など色々な生活習慣病の要因となっています。

魚摂取量と虚血性心疾患

オメガ3脂肪酸が不足することで影響を受けるのは、身体だけではありません。

日本人集団における観察研究の結果、EPAとDPAの摂取量がメンタル面の健康にも影響を及ぼすことが明らかになりました。

大うつ病性障害と EPA、DPA摂取量の関係

オメガ3脂肪酸の摂取量低下は、日本人の健康状態を悪化させる要因の一つになっているのです。

食品保健指導士・管理栄養士 古本 楓

この記事の執筆者

グリーンハウス株式会社

食品保健指導士・管理栄養士

古本 楓

食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、青魚の健康効果やオメガ3脂肪酸・DHA・EPA・DPAについての情報をお届けいたします。

【資格】
公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
 食品保健指導士
管理栄養士