まるごと青魚

DHAの子供への効果

DHAとは?脳と神経の構成要素

DHAはオメガ3系脂肪酸(オメガ3多価不飽和脂肪酸/n-3系多価不飽和脂肪酸)に分類される栄養素で、青魚などに多く含まれています。

人体ではほとんど合成できないため、外部からの摂取が必要です。

DHAは脳や神経組織のほか、網膜に数多く存在していることが明らかになっています。

脳内で、DHAは神経細胞の細胞膜を構成し、神経伝達や情報処理に関与。そのため、胎児期から小児期にかけて脳が急速に発達するなかで、DHAの存在は重要とされています。

子供に対するDHAの効果:研究で示されていること

子供の健やかな成長や発達を支える栄養素として注目されるDHA。

実際の研究では、学習能力や注意力への影響についてどのような結果が報告されているのでしょうか?

さまざまな研究結果の中から、注目度が高い研究結果を交えつつ解説します。

DHAの摂取で学習能力と注意力が向上する?

イギリスで行われたDOLAB研究(2012年)では、7〜9歳の健康な子供に対してDHA(600mg/日)を16週間摂取させた結果、読解力やワーキングメモリ(情報を短期的に保持し操作する能力)、行動面における改善が認められたと報告されています(※1)。

また、タイでも6〜12歳の子ども120人を対象に、低用量魚油(DHA260mg)、高用量魚油(DHA520mg)、プラセボ(大豆油)に分けて12週間摂取させる臨床試験が実施されました。

この研究では、DHAの補給によって認知機能課題中の脳内情報処理能力が向上したことが示されています(※2)。

これらのほかにも、世界各国でDHAの摂取と認知機能に関連する研究が数多く行われており、DHAが認知機能に良い影響を及ぼす可能性が高いと報告されています。

オメガ3系脂肪酸と発達障害との関係

注意欠如・多動症(ADHD)の子どもたちは、一般の子どもに比べて、体内のDHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸の量が少ないことが、多くの研究で示されています。

2017年にChangらが実施した大規模なメタ解析では、ADHDの子どもは健常児に比べて以下のような傾向があると報告されました(※3)。

  • DHAの血中濃度:健常児よりかなり低い(効果量g=-0.76)
  • EPAの血中濃度:やや低い(効果量g=-0.38)

次に、DHAを補うことでADHDの子どもにどのような変化が起こるのかについてですが、同じChangらの研究では、DHAやEPAを含むオメガ3脂肪酸のサプリメントを摂取した子どもたちは、注意力や衝動性の面で改善がみられたとされています。

  • ADHD症状全体:小~中程度の改善(効果量g=0.38)
  • 注意力などの認知機能:特に大きな改善(効果量g=1.09)

これらは薬のような即効性のある効果ではありませんが、神経の働きを穏やかに整える栄養補給として期待できることを示しています。

DHAやEPAの血中濃度が低いほど効果的?

この研究でオメガ3脂肪酸の補給による改善がはっきり見られたのは、もともとDHAやEPAの血中濃度が低かった子どもたちでした。

つまり、オメガ3脂肪酸が不足している子ほど、補うことで変化が出やすいと考えられます。

ただし、DHAやEPAの補給はADHDの薬に代わるものではありません。専門機関でも、あくまで補助的な手段としての活用が推奨されています。

たとえば以下のようなケースで、DHAをサプリメントで補給することを検討してよいでしょう。

  • 魚をほとんど食べない子ども
  • 集中力や落ち着きのなさが気になる
  • 薬物療法を避けたいが、生活面での対策を強化したい

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子供の発達に重要なDHAの必要量は?年齢別の目安量

子どもの健やかな成長と発達を支える栄養素として注目されるDHA。しかし、実は日本ではDHA単体の明確な摂取基準は定められていません。

その代わりに、厚生労働省はDHAを含むオメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)の1日あたりの摂取目安を「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(※4)で示しています。

  • n-3系脂肪酸の食事摂取基準量(1日あたりの目安量 g/日)
  • 0~5カ月 (男性)0.9 (女性)0.9
  • 6~11カ月 (男性)0.8 (女性)0.8
  • 1~2歳 (男性)0.7 (女性)0.7
  • 3~5歳 (男性)1.2 (女性)1.0
  • 6~7歳 (男性)1.4 (女性)1.2
  • 8~9歳 (男性)1.5 (女性)1.4
  • 10~11歳 (男性)1.7 (女性)1.7
  • 12~14歳 (男性)2.2 (女性)1.7
  • 15~17歳 (男性)2.2 (女性)1.7

また、欧州食品安全機関(EFSA)は、幼児には1日100mg、2歳以上の子どもには1日250mgのDHA摂取を推奨しています(※5)。

しかし、これだけの量のDHAを、日々の食事からすべて摂取するのは簡単ではありません。特に魚が苦手な子どもや、偏食傾向のある家庭では、DHA摂取が不足しがちです。

現時点ではDHA単体の摂取目安は日本国内では定められていないものの、海外の機関や複数の研究では、DHAの個別摂取量の重要性も指摘されています。

DHAは何歳から摂るべき?

DHAは胎児期からすでに必要とされており、妊娠中の母親の摂取が赤ちゃんの神経発達に影響を及ぼすことも明らかになっています。

海外における研究で、妊娠 18 週から産後 3 か月まで魚油(DHA 1183mg、EPA 803mg/日)を内服した母親の母乳を与え、4 歳になった子供の精神発達をそうでない子供と比較したところ、対照に比して有意にスコアが高いことが明らかになりました(※6)。

DHAは胎児期から成長期まで、子どもの脳や神経の発達を支える重要な脂肪酸です。

日本国内の基準だけでなく、海外のガイドラインや実際の摂取状況を踏まえると、多くの子どもたちがDHA不足のリスクにさらされていることがわかります。

DHAを確実に摂取するための工夫とは?

理想は魚や海藻などからの摂取ですが、現代の食生活では不足しやすいのが実情です。

特に魚が苦手なお子さんや偏食傾向のある家庭では、DHA不足のリスクが高まります。

食事からの摂取が理想ではありますが、難しい場合は信頼できるDHAサプリメントの活用も検討してみましょう。

食品保健指導士・管理栄養士 古本 楓

この記事の執筆者

グリーンハウス株式会社

食品保健指導士・管理栄養士

古本 楓

食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、青魚の健康効果やオメガ3脂肪酸・DHA・EPA・DPAについての情報をお届けいたします。

【資格】
公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
 食品保健指導士
管理栄養士