DHA・EPA・DPAの違いと特徴
DHA・EPA・DPAはいずれもオメガ3脂肪酸ですが、それぞれ異なる生理的な効果と特徴を持っています。
DHAとEPAが豊富なのは魚類であり、DPAはアザラシなどの海獣や一部の魚に多く含まれています。
DHA(ドコサヘキサエン酸)とは
DHA(ドコサヘキサエン酸)は、オメガ3脂肪酸の一種です。
DHAは胎児・乳幼児期では脳の発達を促進し、成人の脳における機能維持や健常な人の認知機能改善に有効性が確認されています。
また、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の予防といったメンタル面への効果も期待されている物質です(※1)。
脳の約50~60%が脂質で構成され、細胞膜に多く含まれているオメガ3脂肪酸のうち、約11~20%がDHAで占められています。
同じくオメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸は約0.2%、EPAは0.1%以下とごく少量です(※2)。
このことからも、DHAが脳にとっていかに重要な存在であるかが分かります。
EPA(エイコサペンタエン酸)とは
EPA(エイコサペンタエン酸)は、オメガ3脂肪酸に含まれる多価不飽和脂肪酸です。IPA(イコサペンタエン酸)とも呼ばれます。
EPAが注目を集めたきっかけは、1970年代に実施されたグリーンランドのイヌイットとデンマーク白人を対象とした疫学調査でした。
イヌイットが脂質の多い食生活を送っているにもかかわらず、心疾患による死亡率が低い理由を探るため、デンマーク白人と比較。
その結果、イヌイットの主食であるアザラシや魚肉に多く含まれているEPAの作用によって、心血管疾患のリスクが軽減されている可能性が高いことが明らかになりました(※1)。
その後、EPAの作用について臨床研究が重ねられ、慢性疼痛や高脂血症、動脈硬化、炎症性疾患、うつ病などに有効であることが報告されました(※2)。
EPAには、血中の中性脂肪を20~30%、総コレステロールを5~10%程度減少させる効果があることが分かっています(※3)。
逆に、動脈硬化の予防効果があるHDL-コレステロールに関しては、高い数値を示しました(※4)。
細胞レベルの実験によって、EPAは膵がんや乳がん、結腸がん、肺がん、食道がんなどに対して抑制効果があると認められています(※5)。
DPA(ドコサペンタエン酸)とは
DPA(ドコサペンタエン酸)は、DHAとEPAの中間的な性質を持つオメガ3脂肪酸です。
DHAやEPAが魚に多く含有されているのに対して、DPAはアザラシなどの海獣に含まれています。
DPAは比較的新しい研究対象であり、その効果はまだ完全には解明されていません。
しかし、DPAはニキビの病変を改善することが実証されています(※1)。
また、心疾患疾患や高齢者の神経保護、幼少期の発達に特に有効であるとも考えられ、今後の研究による特性の解明が期待されています(※2)。
DHAとEPAとDPAの健康効果
DHAとEPA、そしてDPAを含むオメガ3脂肪酸は、相乗的に作用して健康をサポートします。
DHAとEPAは血圧を下げ、心臓発作や脳卒中のリスクを軽減する効果があります。
DPAはこれらの効果を補強すると考えられています。
EPAの長期摂取がコレステロール値にどのような影響を与えるのかを調べる研究で、日本人で高コレステロール患者18,645人を5年間にわたり追跡調査しました。
その結果、EPAには心血管疾患を抑制する効果があることが認められました(※1)。
前立腺がんと魚の摂取に関する研究で、週に5回以上魚を食べる前立腺がん患者は、週に1回未満しか魚を食べない前立腺がん患者に比べて死亡リスクが48%低いという結果が出ました。
日本人男性における前立腺がんによる死亡率は、諸外国よりも大幅に低くなっています。
その理由として、日本人男性はアメリカ人男性の約8倍にあたる量の魚を消費しているため、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いことが大きな要因であると推測されています(※2)。
他の研究では、魚の総摂取量が1日あたり20g増加するごとに前立腺がんによる死亡リスクが12%低下することが分かりました(※3)。
しかし、食生活の欧米化によって魚の摂取量が減少。日本人男性の前立腺がん罹患率は、年々増加しています。
オメガ3脂肪酸の摂取量を増やすと、子宮の血流が増加して妊娠を促進する効果があるとされています。
また、妊娠中にオメガ3脂肪酸を摂取すると早産のリスクが低下し、胎盤の血流が改善されて胎児の成長を促進。
さらに、妊娠中と授乳中にオメガ3脂肪酸を摂ると、子どもの脳の発達が促される可能性が高いと考えられています(※4)。