まるごと青魚

中性脂肪とEPAの深い関係

中性脂肪が高いとどうなる?

中性脂肪(トリグリセリド)は、体内でエネルギー源として使われる重要な脂質です。

しかし、血中濃度が過剰になると、さまざまな生活習慣病のリスク因子となります。

特に注目すべきは「空腹時中性脂肪値」。この数値が150mg/dLを超えると、「高中性脂肪血症」とされ、以下のような生活習慣病のリスクが上昇する危険性があります。

  • 中性脂肪が高いとリスクが上がる主な疾患
  • 動脈硬化
  • 脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)
  • 高血圧・糖尿病
  • 心筋梗塞・脳梗塞などの動脈硬化性疾患

中性脂肪は善玉・悪玉コレステロールとは異なり、基準値を超えてもすぐには自覚症状が出ません。

そのため、気付かないうちにリスクが上昇している可能性が少なくないのです。

40代以降は「中性脂肪が増えやすい体質」になりやすい

中性脂肪の蓄積は年齢とも密接に関係しています。特に40代以降になると、

  • 基礎代謝の低下
  • 加齢に伴って筋肉量が減る“サルコペニア”
  • 運動不足
  • 内臓脂肪の増加(特に男性)

などの要因が重なりやすく、脂質代謝のバランスが崩れやすくなります。

また、中性脂肪の上昇には自覚症状がほとんどないため、「健康診断で数値を指摘されてはじめて気づく」という人も少なくありません。

放置すれば、脂肪肝やメタボリックシンドロームの進行につながる可能性もあります。

中性脂肪対策として注目を集めるオメガ3脂肪酸サプリメント

こうした背景から、近年では「中性脂肪を下げるにはどうしたらよいか?」というニーズが高まり、特に40代以降の中高年層を中心に、「脂質を整える食材」や「サプリメント」を生活に取り入れる人が増えています。

中でも注目を集めているのが、サバ・イワシ・サンマ・アジといった青魚に含まれている「オメガ3脂肪酸(オメガ3多価不飽和脂肪酸/n-3系多価不飽和脂肪酸)」です。

その中でも、特に中性脂肪を下げる作用があるとされているのが「EPA(エイコサペンタエン酸)」なのです。

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EPAとは?中性脂肪を下げるオメガ3の代表格

EPAはオメガ3脂肪酸の一つであり、血中の中性脂肪を20~30%、総コレステロールを5~10%減少させ(※1)、血液をサラサラに保つ作用があることで知られています。

一方、同じオメガ3系脂肪酸であるDHA(ドコサヘキサエン酸)は、脳や神経の健康維持に関与しています。

EPAとDHAがもたらす作用はそれぞれ異なっており、中性脂肪の低下に関してはEPAの方が有効であるとされています。

EPAが中性脂肪を下げる作用機序【メカニズム】

1999年の日本の研究では、EPAや魚油の摂取により、

・脂肪酸のβ酸化が促進され、脂肪が燃焼されやすくなる

・中性脂肪の合成に関わる転写因子「SREBP」の量が著しく減少

と報告されています(※2)。

SREBP(Sterol Regulatory Element Binding Protein)は、脂肪の合成を促すタンパク質。

EPAの作用でこの量が減るため、肝臓での中性脂肪の合成そのものが抑制されます。

さらにEPAは、高純度処方の医薬品(イコサペント酸エチルなど)としても使用されており、「中性脂肪が高め」と診断された人への治療に実際に使われている成分です。

つまり、EPAの中性脂肪低下に対する効果は臨床的にも有効と認められているのです。

EPAを摂るなら「朝」「夜」どっち?時間栄養学の視点

EPAやDHAなどのオメガ3脂肪酸は、摂取するタイミングによって吸収率が変わるという研究もあります。

2018年に発表された日本の動物実験によれば、朝の空腹時にEPAやDHAを摂取した群では、血中濃度が有意に高くなり、脂質代謝も改善されたことが報告されました(※3)。

これは、朝は胆汁酸の分泌が活発になり、脂溶性であるEPAやDHAの吸収率が高まるためと考えられています。

以上のことから、EPAの中性脂肪低下作用を期待するなら、朝に飲む方が高い効果を期待できそうです。

EPAの摂取量は?過剰摂取すると危険?

EPAやDHAの具体的な摂取量の目安はありません。

しかし、EPAやDHAが含まれるn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)について、厚生労働省では1日あたりの摂取目安量を下記のように示しています(※4)。

  • n-3系脂肪酸の食事摂取基準量(1日あたりの目安量 g/日)
  • 0~5カ月 (男性)0.9 (女性)0.9
  • 6~11カ月 (男性)0.8 (女性)0.8
  • 1~2歳 (男性)0.7 (女性)0.7
  • 3~5歳 (男性)1.2 (女性)1.0
  • 6~7歳 (男性)1.4 (女性)1.2
  • 8~9歳 (男性)1.5 (女性)1.4
  • 10~11歳 (男性)1.7 (女性)1.7
  • 12~14歳 (男性)2.2 (女性)1.7
  • 15~17歳 (男性)2.2 (女性)1.7
  • 18~29歳 (男性)2.2 (女性)1.7
  • 30~49歳 (男性)2.2 (女性)1.7
  • 50~64歳 (男性)2.3 (女性)1.9
  • 65~74歳 (男性)2.3 (女性)2.0
  • 75歳以上 (男性)2.3 (女性)2.0
  • 妊婦・授乳婦 (女性)1.7

EPAを摂りすぎるとどうなる?

ある実験ではEPAとDHAを1日あたり10g以上投与した場合、30~80%出血時間が延長していたという結果が明らかになっています。

その一方で、1年間投与しても出血時間の延長は認められないとする報告もあり、EPAやDHAの摂取が出血量にどのような影響を及ぼすのかについて、はっきりとは分かっていません(※5)。

とはいえ、どのような栄養素でも一度で大量に摂るのは考えもの。

1日あたりの目安量を基準に、毎日継続して摂取するようにしましょう。

また、抗凝固薬(ワルファリンなど)を服用している人は、医師に相談を。

EPAで中性脂肪をコントロールする新習慣を

中性脂肪が高めになると、見た目にはわからなくても、将来的な健康リスクが確実に積み重なっていきます。

EPAは以下のような点で、自然でありながら科学的にも信頼できる対策手段です。

  1. 肝臓での脂肪合成を抑える作用がある
  2. 高中性脂肪血症の治療薬としても使われている
  3. 摂取タイミングは朝がベスト
  4. DHAより中性脂肪低下に特化した作用を持つ

「食事だけではなかなか対策しきれない…」という方は、今日からEPAを意識した生活習慣を始めてみませんか?

食品保健指導士・管理栄養士 古本 楓

この記事の執筆者

グリーンハウス株式会社

食品保健指導士・管理栄養士

古本 楓

食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、青魚の健康効果やオメガ3脂肪酸・DHA・EPA・DPAについての情報をお届けいたします。

【資格】
公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
 食品保健指導士
管理栄養士