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オメガ3脂肪酸と目の健康|視力への働きやドライアイ等の疾患との関係

オメガ3脂肪酸と目の健康|視力への働きやドライアイ等の疾患との関係

網膜に多く含まれるDHAと視力維持のメカニズム

網膜は光を受け取り、視覚情報を脳に伝える神経組織で、私たちの視力を支える最前線です。その中でも、網膜細胞に存在するDHAは、脂肪酸中の50%以上を占める主要成分です(※1,2)。

なぜ網膜には、これほどまでDHAが集中しているのでしょうか。

その理由を、視覚の仕組みとともに解説します。

DHAは網膜細胞に存在する脂肪酸の50%以上を占める

理由①:光刺激を素早く伝える「神経膜の柔軟性」

網膜の最も重要な役割は、「光を感じ取り、脳へ信号を送ること」です。

光を受け取る視細胞(桿体細胞・錐体細胞)の外節膜は、脂質でできた非常に薄い構造を持ちます。

DHAはその膜を柔らかく、しなやかに保つ働きをします(※3)。

DHAの分子は非常に長く、炭素鎖に6つの二重結合を持つため、「くねくね」とした形をしていいるのが特徴です。

この独特の構造が膜を柔軟にし、光刺激を受けたときに信号を素早く伝える神経伝達を助けます(※4)。

その結果として、視覚信号の伝達スピードが向上し、動体視力やコントラスト感度の維持に役立つのです。

この特性のため、DHAは「視覚情報処理の効率を支える脂肪酸」と考えられています。

理由②:視細胞の再生と保護に関与

網膜の視細胞は、日々強い光や酸化ストレスにさらされています。

このため、視細胞の外節膜は定期的に新陳代謝を繰り返し、古い膜が分解され、新しい膜が合成されます(※5)。

この再生の材料として最も重要なのがDHAです。

さらに、DHAは体内で「ニューロプロテクチンD1(NPD1)」という生理活性物質に変換され、視細胞のアポトーシス(細胞死)を抑える働きを持ちます(※3)。

この作用により、加齢黄斑変性や視神経障害など、視力低下を伴う疾患の進行を抑える可能性が示唆されています。

また、近年の研究では、DHAやEPAが眼精疲労の軽減や涙液分泌の改善に寄与することも報告されました(※6)。

理由③:脳と網膜は同じ神経組織である

網膜は「脳の一部」とも言われる神経組織であり、情報処理を行う神経細胞が密集しています。

DHAは視細胞の保護・再生、眼精疲労の緩和、眼圧コントロール、緑内障予防にも関与しており、まさに「視力回復を支えるオメガ3栄養素」といえるでしょう。

また、脳もDHAを大量に含み、神経伝達のスピードや正確性を高めることが知られています。

そのため、DHAの摂取によって「目と脳の両方の働きを改善する効果」が期待できるのです。

DHAカプセル摂取による視力変化の研究結果

DHAの摂取が、高齢者の視覚機能に良い影響をもたらすことが、ある研究によって示されています。

高齢者のボランティア15名(男性1名、女性14名、平均年齢72歳)に、DHAカプセル(1日あたりDHA540mg)を3カ月間毎日摂取させ、DHAカプセル摂取前後の視力の変化を測定しました。

その結果、約67%(15名中10名)に、改善効果が認められました。

ボランティアのうち、11名が白内障患者、1名が緑内障患者、3名が両方の疾患に罹患していました。

このうち、改善効果が認められたのは白内障患者が11名中8名、緑内障患者は1名中1名、そして両疾患合併症の患者は3名中1名した。

中には、0.7の視力が1.2に向上した例もありました(※7)。

これはDHAの摂取によって、網膜や視神経の機能が向上したことによるものと考えられます。

DHAカプセル摂取による視力改善の研究結果

まとめ:DHAが視力を守る理由とは?

視力を支える網膜には、DHAが豊富に含まれており、その含有率は脂肪酸中の50%以上に及びます。

その理由は、以下のような視機能への多面的な作用にあります。

  1. 視覚信号の高速伝達を支える
    DHAは神経細胞膜を柔軟に保つため、光刺激を素早く電気信号に変換するという、視力にとって不可欠な機能を担います。
  2. 視細胞の再生を促し、加齢やストレスから保護
    DHAは視細胞膜再生の材料として働くだけでなく、生理活性物質(NPD1)に変換されることで細胞死を抑制し、黄斑変性などの疾患予防にもつながります。
  3. 視力改善の臨床的な効果も確認
    DHAカプセルの摂取やオメガ3の補給は、視力の改善やドライアイ症状の緩和に効果があることが複数の研究で示されています。
    特に高齢者にとっては、視力低下の予防や維持に寄与する可能性が高い栄養素です。
DHAが視力を守る理由

日常生活で「視力の衰え」を感じたり、目の健康に不安を感じたりする場合、DHAを意識的に摂取することは心強いサポートとなるでしょう。

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DHAと眼精疲労|EPAとの相乗効果

最近の研究では、青魚に含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPAを摂ることで、眼精疲労の改善が期待できることがわかってきました(※1)。

例えば、以下のような研究例があります。

DHAを含む魚油カプセル(1日あたりDHA783mg、EPA162mg、アントシアニン59mg、ルテイン17.5mg)を、眼精疲労の自覚症状がある被験者20人に4週間摂取させたところ、試験終了時に眼精疲労の関連症状である「肩・腰のこり」と「イライラ感」が有意に改善されました(※1)。

DHAとEPAに加えてルテインやゼアキサンチンを摂取することが眼精疲労を改善し、疲れによる視力低下からの視力回復に有効である可能性が高いと考えられます。

では、なぜDHAやEPAは眼精疲労に効果的なのでしょうか?

その主な理由として挙げられるのが、以下の3つです。

血流を改善して酸素を届ける

DHAやEPAは血液の流れをスムーズにし、網膜や視神経に酸素や栄養をしっかり届けます(※2)。

こうして目の筋肉や神経が酸欠状態になるのを防ぐことで、眼精疲労を和らげるのです。

炎症や酸化ストレスを抑える

長時間画面を見ていると、目の細胞は酸化ストレスにさらされます。

DHA・EPAには抗炎症・抗酸化作用があり、網膜細胞のダメージを抑えるサポートをします(※2)。

その働きにより、疲れ目からの視力回復を促進するのです。

神経細胞を守る

光刺激や慢性的な疲労で損傷を受けやすい網膜神経節細胞を保護する働きがあります(※2)。

これにより、視覚情報の伝達が安定し、目の重さやかすみが軽減されると考えられます。

さらに、日常生活での工夫も視力回復効果を高めます。

例えば、

  • 1時間に1回は画面から目を離して遠くを見る
  • 目のストレッチをする
  • DHAを含む青魚やナッツを食事に取り入れる

といった小さな習慣が、慢性的な眼精疲労の軽減につながるでしょう。

視力維持を支える栄養素|DHAとビタミンA・E

現代のデジタル生活では、長時間のスマホ操作や読書、PC作業によって「なんとなく目がぼやける」「夕方になると視界が重い」など、視力そのものの低下ではなくとも“視機能の疲れ”を感じることが珍しくありません。

こうした変化に対し、食生活の面から視力回復を支える栄養素として注目されているのが、DHA(ドコサヘキサエン酸)、ビタミンA、ビタミンEの3つです。

それぞれが網膜・視神経・細胞保護といった別の角度から、視力維持と視力回復に関わるとされます(※1,2)。

ビタミンA:光を捉えるための基本装備

ビタミンAは、網膜で光を感じる「ロドプシン」という物質の材料になる栄養素です(※3)。

そのため、ビタミンAが不足していると暗い場所で見えにくくなったり、目が乾きやすくなったりすることがあります。

また、ビタミンAは加齢による視覚の変化や網膜の健康維持にも関与していることが、研究によって示唆されました(※4)。

ビタミンAが視力に与える役割

日常的にビタミンAを補う手軽な方法が、ニンジン・カボチャ・ほうれん草などの緑黄色野菜を食べることです。

ビタミンAは、油と一緒に調理すると吸収が良くなります。オリーブ油やごま油で炒めたり、サラダにドレッシングをかけたりすると効率的です。

ただし、ビタミンAは脂溶性で体内に蓄積されやすいため、摂りすぎると過剰章(ハイパービタミン症)になる場合があります。

日本人成人の推奨量:男性900µgRAE/日、女性700µgRAE/日です。

バランスを意識して、適量を摂取しましょう

ビタミンE:細胞を守る“抗酸化の盾”

私たちの目の中の網膜や視神経は、毎日の光の刺激や体内での代謝活動の影響で、少しずつダメージ(酸化ストレス)を受けています。

ビタミンEは、こうした酸化ストレスから細胞を守る「抗酸化ビタミン」として働きます。

酸化ストレスは、加齢黄斑偏性(AMD)や緑内障など多くの眼疾患を発症させる原因の一つです。

そのため、ビタミンEを摂取することで「加齢黄斑変性(AMD)」や緑内障、白内障といった眼疾患のリスクを軽減したり、遅らせたりする可能性があるとされています(※2,6)。

ただし、大量に摂れば確実に病気を防げる、というわけではありません。科学的には「補助的に目の健康を支える成分」と考えるのが正しい理解です。

ビタミンEが視力に与える役割

日常生活での取り入れ方としては、ナッツ類(アーモンドやくるみ)、ひまわりの種、植物油(オリーブ油やひまわり油)などを意識して料理に加えるだけでも、ビタミンEを無理なく摂取できます。

例えば、サラダドレッシングにオリーブ油を使う、おやつにナッツを少し食べる、といった小さな工夫でも十分です。

ビタミンEも、ビタミンA同様に脂溶性ビタミンで、体内に蓄積されやすい栄養素です。

ビタミンEが過剰な場合に引き起こされやすい症状として、出血しやすくなったり、血が止まりにくくなったりします。

また、吐き気や下痢、腹痛といった胃腸障害も報告されています。

ただし、食品からの摂取だけでビタミンEが過剰になることはほとんどありません。

ビタミンEの1日あたりの摂取推奨量は、成人男性6.5mg/日、成人女性6.0mg/日です。

サバやイワシなどの青魚やナッツ、植物油など食品からの摂取を中心に、適切な摂取量を意識することが安全かつ効果的な摂取方法といえます。

栄養素の組み合わせで、目の老化リスクを抑える

目の健康を守るためには、栄養素を 「単体で摂る」ではなく、「複数をバランスよく組み合わせて摂る」 ことが、より重要だと考えられています。

例えば、レビュー論文の一つでは、抗酸化ビタミン(例:ビタミンE)、カロテノイド(例:ルテイン・ゼアキサンチン)、およびオメガ3脂肪酸(例:DHA・EPA)が、加齢による目の病気(例えば加齢黄斑変性など)に対して“リスクを抑える可能性”を示しているとされています(※5)。

つまり、「DHAだけ」「ビタミンAだけ」といった単独の栄養素に頼るのではなく、DHA・ビタミンA・ビタミンE・ルテイン(+ゼアキサンチン)などを含む食材を、日々の食事の中で組み合わせて摂ることが、目の老化を防ぐ上で現実的かつ有効なアプローチと言えるでしょう。

DHA・EPAとドライアイの関係

オメガ3脂肪酸の摂取量が、ドライアイの発症率に関係していることが、アメリカで行われた研究によって明らかになりました。

45~84歳の医療従事者の女性32,470人に対して実施された研究では、マグロを1週間に5~6回以上(1回分は113g)摂取した女性は、1回以下の女性に比べてドライアイの有病率が68%も低いことが分かりました。

また、オメガ3脂肪酸に対するオメガ6脂肪酸の摂取比率が高いほど、ドライアイの有病率が2倍以上高いという結果も報告されています(※1)。

オメガ3脂肪酸の摂取量とドライアイの発生率

ドライアイ患者518名に対して行った研究も紹介します。

試験では、ドライアイ患者264名を325mgのEPAと175mgのDHAを含むカプセル1個(500mg)を1日2回投与される「オメガ3群」)オメガ3脂肪酸、254名をプラセボ投与群に分けました。

3カ月後、オメガ3群患者の65%とプラセボ群患者の33%は、ドライアイ症状が有意に改善。オメガ3脂肪酸がドライアイに対して、明確な効果をもたらすことが報告されました(※2)。

ドライアイ患者にDHA・EPAを投与した結果、症状が改善

別の研究では、ドライアイのマウスはオメガ3脂肪酸が不足し、油性の涙液を分泌するマイボーム腺でDHAとオメガ3脂肪酸レベルが著しく低下していることが明らかになりました。

涙が少ない方のマウスにDHAとEPAを含むオメガ3脂肪酸を含む魚油(フィッシュオイル)を1週間継続して与えたところ、涙液量がほぼ完全に回復。

また、涙の産生に関係するマイボーム腺中のDHA濃度が約80%多く回復しました(※3)。

DHAと緑内障|眼圧管理と神経保護の可能性

日本における失明原因の第1位が、緑内障です。

緑内障は私たちの視野を徐々に狭め、視神経をじわじわと蝕む「静かな視覚の侵食者」。

自覚症状が表れにくいため、気付かないうちに進行しているケースが少なくありません。

緑内障は視野を徐々に狭め視神経を蝕む

近年では、網膜神経節細胞(RGC:Retinal Ganglion Cells)への酸化ストレス・炎症・血流低下といった要素が進行に関与していることも明らかになってきました。

そのような背景のもと、DHA・EPAのようなオメガ3脂肪酸が「緑内障や眼圧管理の補助的な役割を果たせるかもしれない」という研究が注目を集めています。

眼圧に関するエビデンス

緑内障で最も注意されるのが、眼圧の上昇です。そのため、緑内障の治療は眼圧を下げる目薬の点眼が一般的です。

しかし、ある研究ではDHAとEPAの摂取によって、眼圧が有意に低下したことが報告されました。

研究では、1日あたり約1000mgのEPA+約500mgのDHAを3か月摂取した群で、眼圧(IOP:Intraocular Pressure)が有意に低下したと報告されています。

この研究では、通常眼圧域の成人であっても、オメガ3補給により平均で0.6mmHgほど眼圧が下がったという結果でした(※1)。

オメガ3の摂取と眼圧の変化

ただし、注意点として対象はあくまで「正常眼圧域の成人」で、緑内障患者を主対象とした大規模試験ではありません。

眼圧低下の程度は“ごくわずか”であり、臨床的に即「緑内障進行を止める効果あり」と結論づけるには、さらなる研究結果の報告を待つことになりそうです。

視神経・網膜神経節細胞保護としての可能性

緑内障では、目の奥にある視神経や網膜神経節細胞が少しずつ傷つき、最終的に視野が狭くなることがあります。

この神経の損傷を食い止めることが、視力低下を防いで目の健康を守る、もう一つの大切なポイントです。

近年の研究では、オメガ3脂肪酸(DHAやEPA)が、この神経保護に役立つ可能性があることが示されています。

例えば、ランダム化試験では、シチコリンとDHAを一緒に摂った人で、視野の変化がやや安定する傾向が報告されました(※2)。

さらに、観察研究では、血液中のオメガ3脂肪酸が高い人ほど、原発開放隅角緑内障(POAG)の発症リスクが低いという結果もあります(※3)。

これは、オメガ3脂肪酸が次のような働きを持つためだと考えられています。

  1. 神経を守る:神経細胞の構造を安定させ、損傷を受けにくくする
  2. 炎症を抑える:酸化ストレスや炎症によるダメージを軽減
  3. 血流を改善する:網膜や視神経への酸素・栄養の供給をサポート

つまり、オメガ3は「目の神経を守るバリア」のような役割を果たし、長期的な視力維持や視力回復に役立つ可能性があるのです。

DHAやEPAで緑内障への補助的なケアを

緑内障対策において、DHA・EPAは「ただ魚を食べていれば安心」という単純な魔法の薬ではありません。

しかし、「眼圧」に関する初期データ、「視神経保護」に関する観察データは確実に積み上がってきています。

緑内障によって視野が狭くなる不安を抱える方にとって、このDHAやEPAといったオメガ3脂肪酸による補助的ケア」の選択肢を持つことは、“自分でできる一歩”と言えるでしょう。

DHA・EPAが加齢黄斑変性症のリスクを軽減

加齢黄斑変性症は60歳以上の高齢者に多い疾患です。

網膜の中心部にある黄斑部が加齢によってダメージを受け、視覚障害を引き起こし、重篤化した場合には失明する可能性もあります。

加齢黄斑変性症は、視力を大幅に回復させる治療法はありません。

しかし、EPAとDHAの摂取量が多いと、加齢黄斑変性症の発症リスクが低くなることが、2001年に大規模観察研究によって報告されました(※)。

HA・EPAが加齢黄斑変性症のリスクを軽減

まとめ

  • 網膜の脂質の中でDHAは50%以上を占めており、目の働きや視細胞の再生・保護などに関与している
  • 青魚に含まれるDHAやEPAを摂ることで、眼精疲労や視力の改善につながるという研究報告がある
  • 視力回復を支える栄養素として注目されているのが、DHA、ビタミンA、ビタミンE
  • オメガ3脂肪酸の摂取量がドライアイの発症率に関係し、患者に対しては摂取により改善効果をもたらすことが研究によって明らかになった
  • DHA・EPAが緑内障や眼圧管理の補助的な役割を果たす可能性や、加齢黄斑変性症の発症リスクを軽減する効果についての研究も進められている

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【参考文献・出典】

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食品保健指導士・管理栄養士 古本 楓

この記事の執筆者

グリーンハウス株式会社

食品保健指導士・管理栄養士

古本 楓

食品保健指導士・管理栄養士としての知識を交えながら、青魚の健康効果やオメガ3脂肪酸・DHA・EPA・DPAについての情報をお届けいたします。

【資格】
公益財団法人 日本健康・栄養食品協会
 食品保健指導士
管理栄養士